きものトリビア【履き物】その1 構造と種類

 最近、実家から譲り受けた下駄の鼻緒をすげ替えました。 これを機にその1では和装時の履き物、次に『その2鼻緒』では鼻緒について掘り下げます。


 和装時の履き物は 主に 草履、下駄、雪駄がある。 

まずは 基本の構造から種類。


構造

台 足をのせるもの。 四角いもの、丸みがあるもの、細身のものなど形や高さが様々ある。 

 台の足を乗せる上部分。

 下駄の台の下部分で、着地部分。通常2枚。

 ぞうりの台の横部分。 高さやデザインによって 1〜5枚などで組み合わせてある。

花緒(鼻緒) 布や皮、紐製で 足を差し入れるため、 台につま先、両横の3点の穴(壺)に通して括り付ける。 漢字は『鼻緒』が正しいが、文字の美しさより『花緒』と書く場合もある。

前つぼ 鼻緒の前穴に入れる部分で、鼻緒の中心部分。



下駄(げた)

 主にカジュアル〜お洒落着に。台は木製で 様々な形がある。

  駒下駄 台の天板に歯を2本をくり出したもの。

  差し歯下駄(継ぎ下駄) 台に 歯をさし入れたもの。

                   作りかたは別として 歯が2本の典型的な形の下駄を『駒下駄』という。

  日和下駄・平下駄 歯の低い下駄、利休下駄ともいう。 

  雨下駄 薄く、高い歯のもの。

  その他 一本歯など・・・。

 *文献によっては 雨下駄と日和下駄が曖昧な部分がある。 (『浅草・辻本本店』HPには詳しく解説してあります。)

 

 さらに 女性用には

  右近 土踏まずにアーチ型にくり抜きがある

  舟形 そこにくりぬきが無い草履と同じ形状

  他に のめり、ポックリなど。 女性の履き物は軽量可のために台の下を中ぐりし、昔はその形が多様にあり 隠れたお洒落ポイントだった。

 さらに 性別問わず、  

  畳表 竹皮表を天に下駄に合わせたもの 薄茶色のものと、黒い烏(からす)表がある。

    

 台は 桐が軽くて人気です。 白木のほか、漆塗りや彫りなどの伝統工芸などを施されているものがある。

 歴史は古く弥生時代、田んぼや湿地の泥に対応した『田下駄』(たげた)が始まりと言われている。(弥生時代の登呂遺跡から出土されている。

 裸足で履く物と思われていますが、 足袋を履いて着用しても良い。 


「桐の白木、右近形の台に、 五嶋紐の鼻緒で 前つぼは緋色なの!」 

と言えたら すごくツウです!!


右近形、当たりが柔らかくなるように裏にクッション材が貼ってあります。小石を踏んでも大丈夫!

鎌倉彫の台。


草履(ぞうり)

 カジュアル・お洒落着〜フォーマルと全般に。

舟形のコルク材の台に布張り、皮張り、エナメル、畳表、夏にはパナマやレース、合成皮革など、他種多様な素材を貼り合わせてある。

 女性用のフォーマルには金銀糸を用いた布製もしくは エナメルや合皮のもので、かかとが高いものが適しています。

 カジュアル向けは かかとが低く、鼻緒と台の色が違うもの。お洒落着には やや高いものを合わせる。 とはいえ、身長や好みに合わせて選ぶ人も多い。 

 畳表を重ねたもの草履は 古式ゆかしい礼正装にもなる。

 巻には 刺繍やデザインを施した個性的な加工したものもある。

 草履は 平安時代ごろ、わらなどの植物を編んだものが始まり。草履の名前の由来ですね。


雪駄(せった)

 わらや竹皮の表に 防水・雪対策のために皮を裏貼りした男性用の履き物。

千利休が考案したと言われている(諸説あり)。

 かかと裏に金属板が打ってあった(尻がね、チャラガネ、ベタガネなど呼び方色々)ため音がして、『雪駄チャラチャラ』という言葉もあったとか・・・。

 大相撲の力士は 階級により履物の種類や素材が決められており、三段目以上でなければ雪駄を履くことができない。(日本相撲協会公式サイトより) 

 わらや竹皮、裏皮の天然素材の他、プラスチックで合皮貼り簡易な製品もある。

  

その他

 草鞋(わらじ) わら編みの草履で、足に固定する紐があり、旅などで使われた昔の履き物。今は一般的でない。

 地下足袋 足袋裏にゴムが貼ってあり足の指の力が伝わりやすい労働用・祭り用の履き物。昔は革製だった。



〜よりみち〜

 下駄や草履は くつと違って足をホールドする形状にない。 多湿な日本であっても 靴が一般化する前の江戸時代までは 水虫の記録がないという。  また、足の指を使って歩くため 足のアーチを保つといわれており、扁平足、外反母趾などの予防や改善にも効果があるという話はよく耳にする。 真偽はわからないが、私は和装を始めてから足の形が整ったと実感している。

 風土や日本人の健康にあった履き物なのである。



まとめ

 和装の履き物は ぞうり、下駄を中心に 様々な形や素材があります。

装いのシーンや好みによって 台と鼻緒を組み合わせることができる 自由度の高い履き物だということがわかりました。 

 さらに日本の風土やその土地に住む人の健康にあった履き物なのである。



 次回は 実際に履物屋さんで 下駄の鼻緒をすげて替えてもらいましたので、その様子と鼻緒のことや 履き心地などをまとめたいと思います。



左:鎌倉彫の台に烏(からす)表+ 金彩の鼻緒。 カジュアル〜紬などのお洒落着向けの下駄

右:エナメル台に 西陣織の鱗柄の鼻緒。 高さあり、色を統一したフォーマル向けの草履 


*このブログは 着付け師、講師、きもの文化検定1級の私が、 和装の学びの一片をまとめたものです。

 文献や各方面のHP、専門店からいただいた知識をもとにしています。 備忘録でもあり、読んでくださっている和装のエンドユーザーへ 少しでも参考になればと思って公開しています。 

 感想は全く個人的なものです。 お試しの方は ご自身の判断で行ってくださいませ。

より専門知識をお求めの方は 専門店をご相談くださいませ。

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