きものトリビア【履き物】その3 選び方とお手入れの仕方

 

 『足もとを見る』という言葉を知っていますか?

相手の懐具合を見る、 さらに対応するという意味でも使われますね。


 昔、店の玄関には 下足番(げそくばん)という客の履き物を管理する店員がいました。

客の脱いだ履き物を見て 格付けして 座敷や席を決めたことから そのような言葉ができたそうです。 要するに履物を見れば 懐具合すなわち経済状況がわかるということです。


 懐具合はさておき、 足元には その人なりが出ます。 

汚れたままの履き物では だらしなく見えます。 高価なものでなくても、古くても 手入れしてあれば良いと思います。 

 着物でも洋服でも どれだけ着飾っていても 靴が草臥れていたら、 残念な印象に・・・。

 そんなことにならないように、 履き物についてよく知り、 好みのものを手入れしながら愛用していきたいですね。

 前置きが長くなりましたが・・・、 履物、特に下駄の選び方とお手入れの仕方です。


選び方

<シーン別> どう見えるか?見せたいか?

白木の木目や塗りの工芸など美術性、 鼻緒の裂地など色や柄も 組み合わせは無限大!

・履いたときの見た目

 着物や足袋とのコーディネートと相性や 好み。 色や生地感、季節感なども。

例えば、白足袋には色のはっきりした鼻緒や台が映えます。色足袋や柄物のの足袋にはシンプルな台や鼻緒がいいかな。「イヤイヤ、いっそ華やかに見せたいよ」というなら、柄X柄もありです。

 

・脱いだときの見た目

 履物を脱いで、玄関に並んだときを想像します。 着姿全体のコーディネートはもちろん、履物自体の完全性を追求します。 台と鼻緒、素材、季節感がマッチしていれば、完璧です。

台の天に模様がなされて左右で一幅の模様が描かれているものもあります。 着物通の集まりであれば、注目間違いありません! 


<履き心地>  やっぱりこれ大事!

 台の形 よく歩くなら 駒下駄 履物屋さん曰く、これは前重心でスタスタと歩けるだそう。

 立っている時間や見た目なら 右近形だそうです。

 これに関しては 駒下駄を余り履きませんので 私感は語れません。しかし、女性は歩幅が狭いので、着物をきてスタスタ大股で歩くこともしませんので、右近形でも十分かもしれないと思っています。 

木肌 これは完全に好みが分かれるところかと思います。

 白木の温かい感じが好きだったり、塗りのひんやり感が好きだったり。

鼻緒 鼻緒は表地の裂地も重要ですが、裏地によって履き心地が変わります。

その2にも書きましたが、特に素足なら足あたりの良いものがおすすめです。


お手入れ

<普段>

 「履き終わったら、硬く絞った布で拭きなさい!」 履物屋さんは必ずそう言います。

小石が挟まっている場合もあるので、表面だけでなく、裏も汚れを落とします。

 ホコリっぱいところを歩いた時は ブラシをかけるものいいです。

 そして、カビ防止のため 湿気が取れてから 下駄箱や箱に仕舞います。


加えて、私が実践している方法があります。

・出かける時

  爪先を上にして鼻緒の左右の穴すぐ上に 内側から両親指を入れて少し横に広げます。

・戻った時

  爪先を下にして 鼻緒の左右、穴のそばを外側から両親指を入れて 上に引きます。

これをすることで 足入れもよく、快適で、 鼻緒を整えられ 長持ちします。

・行きと帰りで左右取り替える。 草履は左右ありませんので、足の履きぐせを付けない為にこうすると長持ちします。

  

<痛んだとき>

 ・鼻緒のすげ替え、底皮、ゴム剥がれ 履物屋さんへ持ち込みましょう。各店舗HPにて価格や納期も確認できる場合が多いです。賢くお付き合いしましょう! ネットでも可能ですが、実店舗は新しい発見や気づきも多くオススメです。




 着物もそうですが、履物も大変奥が深いです。 調べれば調べるほどに発見があります。

外出先で不本意にも 格付けされて不快になったり、 人格を疑われないようにするためにも 手入れの行き届いたものを履きたいですね。

 ちょっとしたコツを知って 楽しく和装を楽しみたいですね。

ご参考になさってくださいませ。 




*このブログは 着付け師、講師、きもの文化検定1級の私が、 和装の学びの一片をまとめたものです。

 文献や各方面のHP、専門店からいただいた知識をもとにしています。 備忘録でもあり、読んでくださっている和装のエンドユーザーへ 少しでも参考になればと思って公開しています。 

 感想は全く個人的なものです。 お試しの方は ご自身の判断で行ってくださいませ。

より専門知識をお求めの方は 専門店をご相談くださいませ。

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