クローズアップ【末広・扇子】
もうすぐおひなさまですね。 可愛らしいおひなさま、ずっと見ていても飽きないものです。
そのお雛様が手に持っているもの、それは檜扇(ひおうぎ)。麗しく優雅なものの象徴。 扇子はそこから発展しました。
煽(あお)ぐものとしてはもちろん、 そしてその形から末広(すえひろ)と呼ばれ 縁起物、祝扇として使われています。
和装とは切っても切れない末広・扇子についてまとめました。しばしお付き合いくださいませ。
<末広とは>
扇子のことです。 その広がる形から 特にお祝いの席で祝扇子を『末広』といいます。
扇子は 竹や木の細い長い骨(板)を『要』で押さえ、広げた部分に 和紙(地紙)を貼ったものです。
仰いで涼をとるものとして実用的ものや ご挨拶の際に使う道具としての象徴的なもの、美術工芸品で装飾的なものがもあります。
<扇子の歴史>
始まりの始まりは 奈良時代の 笏*(しゃく)。 そしてさらに 木簡*をこより*で繋いだ檜扇(ひおうぎ)ができました。平安時代の皇族公家の持ち物として定着しました。
権威や美意識をあわらす装飾であったり、和歌を交換する時に使ったり、顔を隠したりすることに使っていました。
今でも皇室の儀式の服・『装束』でも使われています。男性は袍の中に、女性は手元に持っているのが決まりです。
時代を経ながら 竹や木の骨に片面紙、さらに両側に紙貼るようになり、今の扇子の形になりました。
またその過程で 公家・高僧から次第に一般庶民が使えるものへと変わっていきました。
また、能などの伝統芸能でも使われています。
地紙に絵を描いてあったり、骨に透かし彫りや塗りや蒔絵を施してあったりと美術工芸品して価値のあるものもあります。
ちなみに『友禅染め』を始めたといわれている(諸説あり)宮崎友禅斎は扇絵師でした。江戸時代では扇子に絵を描くのが大流行だったです!
さらに 明治時代に『扇子』と『着物』はパリ万博で紹介され、ヨーロッパの人々を魅了しました。 ヨーロッパの絵画に時々見られる着物や扇子は 日本文化にインスパイヤされて描かれたものなんです(ジャポニズム)。クロード・モネ『ラ・ジャポネーズ』(1876年、ボストン美術館所蔵)は有名ですね。扇面型に書かれた絵画もあります。扇子といえば日本というイメージがここで作られたのですね。
今では 煽ぐ道具としてはもちろん、能、歌舞伎、踊り、落語などの話芸などの伝統芸能のほか、茶道など伝統文化、和装・道具の一部とし広く使われています。
その美しさから室内装飾の一部として 使うこともあります。
<種類とTPO>
骨は主に竹や木製、まれに象牙などもあります。 骨は端で穴を開けられ、『要』で止められています。一般にはじめと終わりの骨は厚みがあり、『親骨』と言います。
骨を等間隔に開らくと扇状になります。そこに地紙を糊付けします。
地紙は主に和紙。他に絹地を貼ったものもあります。扇の開いた面を扇面と言います。
用途によって大きさや、骨の種類によって用途が分かれます。
煽ぐもののほか、以下のような装いに用います。
これらは結界・礼節をあわらす道具として用いますので、開き煽ぐことはしません。
礼装・・・男性:白扇。竹に白い地紙、親骨は細い。
女性:黒塗りか象牙で 両面に金・銀それぞれの地紙が貼ったもの
正装・・・装いの格に合わせて、塗り他竹などでも良い。
茶道・・・表千家:6.5寸長
裏千家:男性6寸、女性5.5寸長
面には花や風景の他、利休百首や歴代の花押が描かれたものなどがあります。
他にも舞踊に、噺家さんでは 扇子を刀やお箸や傘に見立て使います。
また、塗りや彫り、箔、絵の美術手工芸品として、室内装飾としても使われます。
高僧などが用いる『中啓』という形の扇もあります。
形、大きさ、決まり事や使い道は他種多様。興味がある方は 専門店のHPや書籍にて ぜひ追求・研究してくださいませ。
<数え方>
閉じた状態で本、握、柄。 広げた状態は面、枚。
数え方、呼び方一つをとっても表現豊かな日本語ならではですね。
<名品・販売店・その他>
京都には 老舗の『宮脇賣扇庵』は 創業文政6年(1823)、 『白竹堂』はなんと享保3年(1718)他にもまだまだ名店あります。 東京では日本橋や銀座、台東区に多くあります。他名古屋や金沢にも。
実店舗のほかネットで購入できます。 名入れサービスがあったり、 末広がりという事でお祝いやお別れのプレゼントにもされるそうです、素敵! 持ち運びするもの、大切なものは ケースに入れると長持ちしますね。
<まとめ>
扇子は単なる煽ぐ道具あらず、古い歴史を持ち、日本の伝統や芸能・手工芸・文化・精神を象徴とするもの。
和装のおともとして、礼節を表すものとして、縁起物の贈り物として贈り物としても使われるものです。
実は ご縁あって、キッカケもらいました。
今年は 結婚◯周年! 記念に素敵な1本を見つけたいと思います!
*笏 象牙や木製の細長い薄板。 男子皇族・公家・神官が儀式で着る正装『装束』の一つで、手に持つもの。おじゃる丸の探し物(笑)
権威付けや結界を示すものでもあるが、実は裏に式次第やスピーチの内容を忘れた時のメモ、いわゆるカンペ的なものが書いていたという実用的な面もある。
*木簡 木の薄い板。紙が登場するまでに使われた記録するための媒体。
*こより 紙を撚って作った紐
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