染織を学ぶ【伊那紬】〜伊那谷に伝わる温もりの織物〜後記


 今回の旅行は 私がお世話になっている茶道教室の企画。 社中の姉弟子が伊那と東京の二重生活をしていらして、その伊那のお家を訪ねて 自然を楽しみ、お茶を点てましょ! という企画でした。 彼女のコネクションで 炭窯に行って 説明を受けちょっとした作業をしたり、 森に入り木々を眺めに散歩したり、山菜を採ったり、伊那の美味しいものを頂いたり、野点をしたりと楽しく過ごさせていただきました。 さらに紬の工場見学もと充実した旅行でした。

 

 今回の伊那紬の工場見学の計画は、 ちょっとした会話から始まりました。

お稽古の折、伊那の旅計画があることを知って、「伊那といえば・・・伊那紬ってありますよね?!」と。 しかし長年伊那で過ごしている彼女ですが、伊那紬を詳しくはご存知なかったご様子でした。 伊那紬をはじめとする信州紬は着物人には憧れの存在。 私は特に草木染めに興味があって、しかも希少な手織りということで 、「草木染め、手織りではなかったかしら・・・?」などとお返ししたりと、本当にちょっとした会話でした。


 その夜、彼女から連絡がきて、 伊那市のお隣の駒ヶ根市に伊那紬の工場があり、見学も出来そうだと。 (すぐに調べるという好奇心と向学心を見習いたい。) なので、もう一泊泊まってオプショナルツアーをしましょう!となりました。 

 今後の課題として着物の郷を訪ねる旅をすることにしている私には もう渡り船! 行かないわけがありません。 

 このように本当にちょっとした会話から伊那紬の工場見学ができることになったのでした。 日頃の無駄なお喋りは戒めたいところですが、今回は思い出してそれを口にしたことを褒めたい気分です。


 さて、伊那紬ですが、草木染めのしっとりした色合いはどの色を合わせてもしっくりきます。 自然の穏やかで優しい色合いに心が落ち着きます。 しかし、他の信州紬とはまたちょっと違う風格があるように思います。 それが色なのか、その組み合わせなのか、グラデーションによるものなのか・・・。 いまだピンとくる結論が出ません。 久保田織染工業の専務さんが伝統的なものを受け継ぎつつ、新しいものに挑戦していると仰っていました。そこに答えがあるような気がします。 

 伊那紬は真綿からとった糸で織られています、その生地は着心地が格段に違います。 真綿の糸でできた着物は体に沿い記憶形状繊維のようです。 軽くて着ている感覚とは少し違う、まるで羽衣を纏っているようななふんわり感があります。 反物状の生地は糊をしているのであまり感じませんが、洗って仕立てるとそのような着心地です。生糸で織った生地の滑らかさや華やかさとはまた別な感触、体感なのです。

 そうは言っていますが私が持っているのは結城紬・・・。 温もり糸と洗練された配色の織物、伊那紬、欲しい。 ここは本場、買わない手はないのですが、 訪問着を買ったばかりで懐具合も寂しいということで、今回は断念。 希望を次回につなぎ、素敵な小物で辛抱でした。


 ところで、旅の企画実行委員長の姉弟子は 森林と環境をテーマにしたライターさん。 見学後に会話の中で、 草木染めの材料調達についてになり、どうやら彼女のツテを通じて何やら 今後につながりそうなお話に。

 ちょこっとした会話から私の大好きな紬につながる旅になり、さらにそこで茶友がその紬の製作過程に加わる気がして嬉しく思うのでありました。 また彼女の伊那に対する視点が自然環境や森林だけでなく、伊那で作られる紬という視点が一つ加わったように思えて それもまたとても嬉しかったことです。


 毎度のことですが、 旅行から帰れば楽しかった思い出と共に 後悔があります。

あれもすればよかった、これも買えばよかった、そこへも行けばよかったと。

 旅行自体は、その企画、実行の全てをおんぶにダッコして すこぶる楽チン、快適な旅行でした。 しかし、私ときたら 予習というものを全くせずに行ったことが悔やまれます。

 紬のことや着物のことは多少は知ったつもりになっていたし、行き当たりばったりの旅もいいものではないかと思っている節もあります。 確かにそうではあるものの、やはり少し勉強して行った方がもっと深く楽しめたのでは と思うのです。 工場見学でももっと聞きたいことはあったのに、たくさんの反物を目の前にして 情けないことに聞きたいことがあったことすら忘れてしまいました。 

 次回、長野を旅するときは 伊那紬だけでなく、信州紬、ひいては 伊那、信州全体に関してもう少し予習して 臨むことにします。


 この旅で感じたのは 信州の大自然の雄大さはもとより、 人との関わり・ご縁がつながっていることでした。 

 そもそも 何十年も封印してきた茶道への憧れを 現実にしてくれたFさん。 指導してくれている師匠、社中の方々、今回は特にライターの姉弟子。 さらに伊那の彼にのつながりのある方々、さらに彼女のコネクションが伊那紬もつながるかも?! 順番に辿らなければ この旅はなかったのだと思うのです。 

 着物や茶の湯は 私の人生を一入(ひとしお)、二入(ふたしお)と深みを与えてくれる気がします。 草木染めのようにね。 そうつくづく感じて、感謝した旅でした。 


 この旅行を企画、運行してくれたKさんへ 改めて感謝を申し上げます。




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一入(ひとしお)・・・程度が増すこと。ひときわ。 染め物を染液に一回入れること。ひとしお、ふたしお、一回染め、再びもう一回と 草木染めは回を重ねるごとに色が濃くなっていく。(染料の濃度による色の濃淡をつける化学染料との違いに注目です。)

*きもの文化検定1、2級あたりに出題があったような・・・。要チェックの言葉です。


写真:旅の締めくくり

緑いっぱいの高城址公園下で野点。 木漏れ日が美しく、皆さんの笑顔が印象的でした。



石川さゆりさん 熊本を語っていますが、伊那(の紬)を着ています。いいキャッチフレーズです。(笑)

染め:山桜とラックダイの一色染


配色、グラデーションが美しい。 空の青とアルプス山脈の紫、森林のみどりでしょうか?

経糸と緯糸の重なり具合をよくみて欲しい。 さらに二枚綜絖や筬(おさ)と上框、千巻がよくわかる。 


おまけ: 焚き火は人の心も溶かすのか?! 親交も深まる夜。

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