クローズアップ・帯板編
(写真1:単衣の江戸小紋行儀、塩瀬の帯に絽ちりめんの帯あげ、後出の帯の『した下がり』、『下すぼまり』)
「着付け小物は どんなものを用意したらいいですか?」
これは ほぼ毎回初回の着付けレッスンで聞かれることです。
ネットで調べると本当にたくさんの着付け道具があるので、 どんなものを選んだら良いのかが分からなくなりますので当然です。 また着付けの流派や先生によっても違うので質問するのだと思います。
着物姿の主役、着物や帯などとは違い、 好み先行というより 着物の着用シーンや 使いやすさ・快適さ優先で 選んで欲しいです。
ところで、
*** クローズアップシリーズについて ***
クローズアップシリーズ、 前回は 『足袋』について掘り下げました。
書きたいが あとから後から出てきて 何度も書き足し、長文になってしまいました。 それほど、種類や素材から歴史まであるということですね。
このシリーズでは このようにきもの周りをいろんな視点から掘り下げていくものです。
きもの文化検定の対策、勉強・学びのアウトプットの機会としてとして、 調べたことの備忘録として着物周りのあれこれを 書きたいと思っています。
また、これから検定を目指す方へ、着物愛好家、特に着物初心者へ 楽しみながらご参考になるように と思って書いております。 今日もお付き合いくださいませ。
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さて、 今回は 着付け小物の中から
『帯板』にクローズアップしていきます。
<帯板とは>
帯の胴巻部分へ入れて、帯のシワを防ぐ 板状のものです。
前帯部分に使う物は 『前板』、 後ろ胴巻に入れるものは 『後ろ板』といいます振袖の帯結びには欠かせません。
お子様用もございます。一般的には 主に七歳児の祝帯に使います。
プロ着付けの現場では 厚紙などで代用する場合があります。
<形状>
主に厚紙などに布を貼ったもの。
<素材>
上の写真のように ポリエステルの綸子やちりめんの布張りが主流です。
他に 麻 や へちまが中に入っているものもあります。 夏には快適に過ごせそうですね。
(*私は使ったことがありませんので想像です。理由はまた後ほど)
また、プラスチックの板そのまんま というものも。
<大きさなど>
・長さ 前胴の幅分より少し短いものを選びます。
フォーマルや振袖はそれより長いものを選びます。 その他胴脇の帯のシワが気になる方は長いものを選ぶと良いでしょう。
・高さ 10〜15cmが主で、 高さのあるものは 留袖や振袖用など礼装正装向けです。また、背の高い人で前帯を幅出しする方などに使います。
・厚み・硬さ 店頭などで確認できたらチェックしてください。
ふくよかな方は 厚みのあるものは 着膨れするので避けます。
硬いものはものは 体に負担がかかります。 普段使いならソフトなものを!
(ただし、柔らかすぎるのもNGです。写真3の浴衣用のメッシュ紐付きは、やわらかすぎて 帯板としての役割を果しませんでした。もはや伊達締め替わりや家用です。押してすぐに凹むものはダメです。)
<色柄>
無地、特にピンクの綸子布貼りが多く、 小紋柄ちりめんもあります。 さらに黒もあり喪服や 色の濃い着物や帯に使っても。
浴衣用には 帯板の上部分にレースの飾りがついているものもあります。帯揚げのように帯の上でふわっとしてかわいいので、お若い方はどうぞ!
<便利なもの>
メッシュ、通気の穴あき・・・通気性がよく蒸れ防止に。
メッシュも一重、二重のものなどがあります。一重は浴衣や自宅用に、二重はしっかりしていますので外出着にも適しています。
(私は年中メッシュです。 今愛用の『たかはしきもの工房さん』の 『べっぴん帯板』のメッシュです。
胴回りには 肌着、長襦袢、伊達締め、紐、帯と 重なっています。 夏以外でも結構蒸れますので、メッシュを使用しています。 また、ふくらみも出ますので、 厚みのあるへちまや麻のものは ゆったりサイズの私には不向きなのです。 逆に痩せている方は 使えるものと思います。)
ベルトや紐付き・・・便利です。 初心者はゴムベルト付きをお勧めします。
前結び用のもの・・・帯結びを前で結ぶ方法の時に使うものです。胴回りに1巻して マジックテープを留めるベルト状ものもです。 滑りやすいので、前に結んだ帯結びを後ろにまわしやすくなっています。
前結びしたい方は使ってもいいですね。
(私的意見ですが、窮屈が苦手な私には ちょっく苦しいです。また、メッシュのものでなければ、暑そう。)
ポケット付き、クッション付き・・・
ポケットはあると下げ時計など入れておけると思いますが、思ったほど使いません。小さいものは ポケットがなくとも 帯のなかへ INしています。
クッション(下の写真は縫い付けから取り出しています)は 長細い蒲鉾状のウレタンで、帯板の上部中央へ入れて前帯を『した下がり』にするものです。 そうすることによって胸元に隙間ができて ゆったりと見え着慣れ感がでます。また、圧迫感もないので、胸が大きい方にもお勧めです。クッションはあらかじめ付いている商品がありますが、 なければ、手拭いなどを畳んで差し入れると同じ効果を得られます。(写真1がこちらの帯板を使っています。)着付けに慣れてくると 何も差し入れなくてもできるようになります。
<男性用>
男性の角帯用の商品もあります。 角帯は幅が狭くしっかりしているので、個人的には使用しなくても良いのではと思いますが、お好みで使ってみても良いと思います。
<歴史>
そんなに古くはないようです。はっきりしたことは 調べられませんでしたが、戦前はなかったようです。古い写真を見れば クッタリした帯周り。 丸帯の時代は帯板は必要なかったでしょう。 少なくとも 大正明治時代になって名古屋帯が出てきて、その後昭和に入って戦時中はモンペ姿も多かったし、まだまだ袋帯も多かったし、重量の重い帯も多かったはず。
しばらく戦後の復興で着物は脇におかれていたはず。 戦後、復興のシンボル・東京オリンピックの頃に 着付け教室と共に 着付けの道具と呼ばれるもの多くが 出てきたものと思われます。 着物が普段着に着ることがなくなってから 『自分で着物を着れるようになりたい』さらに『綺麗に着物を着たい』 という風潮からのようです。
雑誌のようにシワ一つない着姿はそれはそれは 美しい。 けれども、それは絵空事。
着物を着て動けば、シワもできるし、凹みもします。
それは承知しているけれど、 着物が日常着でなくなった以上、『自分で着れるようになりたい』『できるだけ綺麗に見せたい』というもの 人の心でしょう。 それを叶えるのも着付け小物であることは間違いありません。
いかがでしょうか? 帯を素敵に下支えしてくれる帯板。
帯の下は風が入り込まず蒸れるため快適にできるような商品がたくさんあります。また、帯結びが楽、きれいになるようにサイズ他に工夫があるものもあります。 自分に合ったもの・着用シーンに応じて選んで欲しいと思います。
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